医療的ケアが必要な人の停電対策

災害時の停電が命に直結する方達がいます。医療的ケアが必要な方達です。そしてさらに、今は、コロナ禍で、酸素濃縮器などを自宅で利用されはじめた方もいます。このような状況で災害が起こり、停電したらどうなるのか、検討されていますでしょうか?

残念なことに、こんな時、外部電源があれば、必ず大丈夫という訳ではありません。なぜかというと、医療機器の精密機械の多くは、建物内など常設のコンセントから直接電気をとることが使用条件となっている場合がほとんどです。安定した電力を確保することで確実に動作することが求められる製品だからです。ポータブル電源をはじめ、HV車、PHV車、EV車など、電気を給電できるクルマからの給電も、原則として精密機械である医療機器には認められているわけではないのです。とはいえ、災害時は、電気がないことが命に直結します。外部電源が確保できたことで助かったという事例が、過去の災害で存在したのは事実です。そのため、特に東日本大震災以降、患者団体(※1)や医学会(※2)などが、どの医療器具と、どの非常用の電源であれば、災害時に使えるかなど苦労して検証してきました。

※1  チームやちよキッズ 地震が起きても困らない 医療ケアが必要なこどもと家族の暮らし方ヒント
        http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/docs/booklet/booklet32.pdf

※2 日本小児科学会 “医療が必要な子どもたちの防 災 対 策 ”  https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/ iryohitsuyo_na_bosaitaisaku.pdf
       三重県小児科医会 小児在宅検討委員会 周産期委員会 「災害時対応ノート」作成のための小児在宅医療的ケア児災害時対応マニュアル
     http://www.mie.med.or.jp/hp/ippan/shonizai/2.pdf
  国立成育医療研究センター.“医療機器が必要な子どものための災害対策マニュアル
        https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/cooperation/shinsai_manual.pdf

国や自治体で実施されている3つのタイプの助成金

1. 在宅人工呼吸使用難病患者非常用電源設備整備事業

上述の検証結果の積み重ねの上に、国と都道府県は、まず「在宅人工呼吸使用難病患者非常用電源設備整備事業(※3)」という仕組みを作りました。

出典 東京都 「在宅人工呼吸使用難病患者非常用電源設備整備事業のご案内」

この事業では、都道府県が、医療機関などに非常用外部電源の購入資金を提供します。そして、購入した医療機関は、医療的ケアが必要な方に、無料で貸し出しを行います。

2.「日常生活用具の給付」の項目に、「発電機」を含める助成金

また、国と市区町村で実施する医療ケアが必要な人に対する「日常生活用具の給付」の項目に、「発電機」を含めることにして、直接患者さんの電源確保器具の購入を助成する市区町村も増えてきました。

出典 浦安市 日常生活用具の給付

この制度では、発電機のほか、ポータブル電源などの購入も認められています。

3. 人工呼吸器用非常用発電機購入費補助金

さらに、最新の動きとして、停電時に特に困る人工呼吸器に限定して、非常用発電機の購入費用の一部を補助する自治体がでてきました。「人工呼吸器用非常用発電機購入費補助金」という名前で実施されています。

出典 広島市 人工呼吸器用非常用発電機購入費補助金

※3 参考 東京都 在宅人工呼吸使用難病患者非常用電源設備整備事業   https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/iryo/nanbyo/portal/service/zaitaku/dengen.html
※4 参考 札幌市 在宅で人工呼吸器等を使用する障がいのある方に非常用電源装置等の購入費用を助成します  https://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/guide/zaitaku_08.html#taisyo

緊急時の対策であることを忘れずに

このように、公的機関が、医療的ケアが必要な方たちに助成を開始したので、現在では、医療機器であっても、外部電源が、気軽に使えるように思われてしまうかもしれません。しかし、原則は、医療機器に直接外部電力をつなぐことができないことに変わりはありません。医療機器ごとの細かな注意事項を設けたり、万が一使えなかった場合のバックアップも実施するなど、諸条件をクリアしたうえで、災害時に外部電源の使用が可能になっているものだと思ってください。そして、たとえ条件をクリアしても、緊急時の外部電源の使用は自己責任になってしまっているのが現状です。将来的には国のガイドラインが作られたり、メーカーにとって過剰なリスクを負わずにすむ制度があればもっと利用しやすくなりますが、まだ模索中の分野でもあります。

いずれにせよ、ここに至るまでに多くの人の働きかけや、日々の地道な防災の取り組みがあっての今日があることを、知っていただければ嬉しいです。

医療機器の災害時の電源確保の注意点

では、実際に医療機器ごとにどのような注意点が必要なのでしょうか?主に使用される人工呼吸器と酸素濃縮器について説明します。

人工呼吸器の場合

出典 イラストAC

人工呼吸器の場合、メーカー純正のバッテリー(内蔵・外付け)がある場合があります。その他、医療用の非常用バッテリーも販売されています。それらがない場合は停電と同時に止まります。内蔵バッテリーがある場合は、しばらく使えますが、内部バッテリーは最後の手段として残しておきたいものです。余裕があるうちに、他の代替手段に切り替えます。

出典 岐阜県 医療的ケア児等災害時電源確保ガイドブック 令和3年3月

外付けの純正バッテリーや非常用バッテリーの充電については、発電機やポータブル電源などからの充電を認めるものも増えました。しかし、人工呼吸器への直接の給電は、原則として認められていません。人工呼吸器を使用している方は、まず純正バッテリーの有無と内部バッテリーで動かせる想定時間を調べてみてください。 さらに、電源がすべて途絶えた場合も想定して、手動で対応できる器具も災害対策として準備しておきます。

出典 岐阜県 医療的ケア児等災害時電源確保ガイドブック 令和3年3月

酸素濃縮器の場合

新型コロナウイルスの自宅療養者にも必要な医療器具として、「酸素濃縮器」が注目されています。酸素濃縮器は電気により、空気中の酸素と窒素を分離させ高濃度の酸素を作り出す医療器具です。こちらも停電した場合、外部電力を使用しないことが原則になります。極力、酸素ボンベに切り替えます。

出典 岐阜県 医療的ケア児等災害時電源確保ガイドブック 令和3年3月

最近は、人工呼吸器と同様、バッテリー(内蔵・外付け)があるものも出てきました。外付けバッテリーについては、ポータブル電源等からの給電が認められているものもあるので、確認してみてください。

その他の機器についても、「岐阜県 医療的ケア児等災害時電源確保ガイドブック 令和3年3月」https://www.pref.gifu.lg.jp/page/128726.html や国立成育医療研究センター「医療機器が必要な子どものための災害対策マニュアル」https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/cooperation/shinsai_manual.pdf に最新情報が詳しく記載されていますので、参考になさってください。(引用許可確認)

医療機器以外でも医療的ケアが必要な人たちの電源確保は重要

医療的ケアが必要な方達が、停電した場合困るものは、精密機械としての医療器具だけではありません。電動ベッドや、体温調整の扇風機や電気毛布など、安否確認・情報収集でのスマートフォンも日々の生活で重要です。こちらについては、ポータブル電源からの給電がふだんから可能なものも多くあります。

助成金事業で、ポータブル電源を利用している人の声

最後に、実際に助成金事業で、ポータブル電源を利用している医療的ケアが必要な方(ご家族も含む)の声についてご紹介します。沖縄県難病相談支援センター認定NPO法人アンビシャス(以下アンビシャス)は、難病のある方や家族を支援する認定NPO法人です。

出典 沖縄県難病相談支援センター認定NPO法人アンビシャス

アンビシャスでは、沖縄県が実施している「在宅人工呼吸使用難病患者非常用電源設備整備事業」で医療的ケアが必要な方達に非常用電源の貸与事業を実施しています。 そのアンビシャスの貸与事業で複数の非常用電源が選べるのですが、介助をされている方に最近人気なのが、ポータブル電源だということです。理由をお聞きしたところ、 「沖縄は、台風の常襲地域です。暴風で停電した際に、外に出て発電機を動かすのは危険が伴います。発電機は大量に電気を生むメリットはありますが、室内で使用は厳禁、雨に濡れてはいけないなど注意点が多いです。気軽に使えるのはポータブル電源を選ばれる方が増えてきています。」とのことでした。 また、選ばれる基準として、蓄電容量はもっとも気にされる事ですが、スペックの高いものを1台持つ方とスペックは落ちても、2台で交互に使えることを重視する方もいるそうです。

また、充電の早さに重点をおく方もいるとのことです。台風など数日前から備えられる場合もありますが、最近は、雨雲レーダーで局地的な雷雨が数時間後に来るという場合もあります。その時の停電に備えるという際、充電の速さは心強いです。その他、クルマで病院まで移動する時に、ポータブル電源を使いたいという方は、持ち運びやすさを重視するとのことです。自分がどのように利用したいかわかっていると、種類も選びやすくなりますね。

そして、意外な注目点は、ポータブル電源の上にものが置けるかどうかという点を重視されている人もいるそうです。医療的ケアグッズなど、すぐ使いたいものは身のまわりに置いておきたいからということでした。

その他にもインテリア性や 持っていて楽しくなるデザインかどうかも基準になることがあるとのこと。介助といえども、楽しい気分で実施したいですよね。

以上、医療的ケアが必要な方達の電源確保の最新情報を紹介してきました。今は、新型コロナウイルス対応で酸素濃縮機などの医療機器を使用する方もいます。医療的ケアが必要な人たちの災害時の対応が様々な方の努力で検証されてきたことは、その方たちのためになるのはもちろん、すべての人にとって有益な事であったことを実感しています。医療的ケアが必要な方はもちろん、すべての人の災害対策に、今まで積み重ねられた知見を役立てていただければ幸いです。

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