生成AIの利用が急速に広がる一方で、AIの電力消費が世界的な課題として注目されています。大規模なAIモデルの学習では、数千から数万台規模のGPUを使用するケースもあり、大量の電力が必要です。データセンターでは、冷却設備や電源設備にも電力を消費します。
そこで本記事では、AIの電力消費問題について解説します。AI利用1回あたりの消費電力量や、大量の電力を必要とする理由、電力供給やコスト、CO2排出量への影響も掲載しているので、AIと電力の関係を正しく把握したい方はぜひ最後までご覧ください。
AIの電力消費問題とは
AIの電力消費問題とは、生成AIをはじめとするAIサービスの普及に伴って、モデルの学習や推論を行うデータセンターの電力需要が急速に増えている問題です。AIはパソコンやスマホの画面上で利用できるため、利用者視点では大きな電力を使っているように見えません。
しかし、実際の処理はデータセンター内のGPUやAIアクセラレーターなどで実行されており、サーバーを稼働させる電力に加えて、熱を取り除く冷却設備にも電力が必要です。
AIの普及でデータセンターの電力消費量が急増
AIの普及によって、世界のデータセンターによる電力消費量は急速に増加しています。IEAの2026年報告によると、世界のデータセンターによる電力消費量は2025年に約485TWhへ達し、前年比で17%増加しました(※1)。
AI向けデータセンターだけを見ると、2025年の電力消費量は前年から50%増えています。主要AI事業者では利用者数や売上高も大きく増えており、推論処理の総回数が増えている点も電力需要を押し上げる要因です。
※1参考:IEA「Executive summary – Key Questions on Energy and AI – Analysis - 」
AIの電力消費量はどれくらい?
AIの電力消費量は、何を基準に測るかによって大きく異なります。世界全体の問題を把握する場合はデータセンターの年間電力消費量が使われますが、AIサービス単体を見る場合は、1プロンプトや1回の推論に必要なWhが目安になるでしょう。世界のデータセンターによる電力消費量や、AI利用1回の電力消費量を詳しく解説します。
世界のデータセンターによる電力消費量
世界のデータセンターによる電力消費量は、2024年が約415TWh、2025年が約485TWhです(※2)。わずか1年間で17%増加しており、AI向けデータセンターでは50%増えました。AI向けデータセンターは特定地域へ集中しやすく、地域の電力網へ大きな負荷を与えます。
※2参考:IEA「Energy demand from AI – Energy and AI – Analysis - 」
AI利用1回の電力消費量は電子レンジ何分相当?
OpenAIのSam Altman氏は、平均的なChatGPTのクエリが約0.34Whと公表しています(※3)。一方、消費電力1,000Wの電子レンジを使う場合、1分間の消費電力量は約16.7Whです。そのため、クエリ1回に要する0.34Whは、電子レンジ約1.2秒分に相当します。
ただし、リーズニング、AIエージェント、動画生成などの高負荷タスクでは、単純なテキスト生成に比べて数百倍から数千倍のエネルギーを使うケースがあります。入力文の長さ、出力文字数、使用モデル、画像・動画の有無などでも電力消費量は変動するでしょう。
※3参考:Sam Altman「The Gentle Singularity」
AIはなぜ大量の電力を消費する?
AIが大量の電力を消費する理由は、モデルの学習と推論の両方で大規模な計算が必要になり、データセンター設備にも電力が必要だからです。1回のテキスト生成が小さな電力量でも、世界中から大量のリクエストが継続すれば総消費量は大きくなります。AIの主な電力消費要因は、以下のとおりです。
1.AIモデルの学習に高性能GPUを大量に使う
2.生成AIの普及で推論による電力消費が積み重なる
3.データセンターのサーバー冷却に電力を使う
それぞれの要因について、詳しく見ていきましょう。
1.AIモデルの学習に高性能GPUを大量に使う
AIモデルの学習で大量の電力を消費する大きな理由は、多数の高性能GPUを並列稼働させるためです。大規模言語モデルは、膨大な学習データを読み込みながら行列演算を繰り返し、モデル内部の多数のパラメータを調整します。
モデルとデータが大きくなるほど必要な計算量も増えるため、学習時間を現実的な範囲へ抑えるには、複数のGPUへ処理を分散させなければなりません。
2.生成AIの普及で推論による電力消費が積み重なる
生成AIでは学習済みモデルへ利用者が文章を入力し、回答、画像、音声、動画などを生成する処理を「推論」と呼びます。利用者がプロンプトを送るたびにデータセンターで推論処理が発生するため、サービスが広く普及するほど電力消費が積み重なります。
また、全ての推論が同じ負荷ではありません。動画生成、リーズニング、エージェント型AIなどが、単純なテキスト生成より数百倍から数千倍の電力を使う場合があります。
3.データセンターのサーバー冷却に電力を使う
AIを動かすデータセンターでは、サーバーから発生する熱を取り除く冷却設備にも電力が必要です。高性能GPUを多数搭載したサーバーは高い電力密度で稼働するため、温度や湿度を適切に保たなければ、性能低下や機器障害につながる可能性があります。
空調、ファン、冷却水ポンプ、液冷設備などを使って熱を外へ逃がす必要があり、その分だけIT機器以外の電力消費も発生するのです。2024年時点で冷却・環境制御設備がデータセンター全体の電力に占める割合は、効率が低い施設で30%を超える場合があります(※2)。
AIの電力消費増加が引き起こす3つの問題
AIによる電力消費の増加は、単に「電気代が増える」という問題だけではありません。データセンターは数十MWから100MWを超える大規模な電力負荷になり、特定地域へ集中して建設される傾向があります。AIの電力消費増加が引き起こす問題は、以下のとおりです。問題1|電力需要の増加で供給量が不足する
問題2|電力コストが上昇する
問題3|CO2排出量の増加で環境負荷が高まる
それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
問題1|電力需要の増加で供給量が不足する
AIの電力消費が増えると、データセンターが集中する地域では電力供給能力や送電網の容量が不足する可能性があります。一般的なデータセンターの電力規模は10〜25MW程度ですが、AI向けのハイパースケールデータセンターでは100MW以上になるケースがあります。
問題になりやすいのは、発電設備や系統容量が限られる地域へ巨大な需要が集中する場合です。データセンターを余力のある地域へ誘導する、蓄電池を利用する、需要を柔軟に調整するなど、立地と電力システムを連携させる対策が重要になるでしょう。
問題2|電力コストが上昇する
AI向けデータセンターの急増は、企業の電力調達費や電力インフラへの投資額を押し上げる要因です。大規模データセンターを新設するには、サーバー設備だけでなく、新しい発電設備、変圧器、変電所、送電線、蓄電設備などを整備しなければなりません。
電力コストは、データセンター事業者が系統増強コストをどこまで負担するか、電力需要をピーク時間から移せるか、発電設備をどのように増強するかによって異なります。
問題3|CO2排出量の増加で環境負荷が高まる
AIを動かすデータセンターの電力が石炭や天然ガスなどの化石燃料で発電される場合、電力消費の増加に伴ってCO2排出量も増加します。IEAによると、2024年時点で世界のデータセンターが電力使用を通じて間接的に排出するCO2は、約1億8,000万トンです(※4)。
データセンター由来のCO2排出量は、以下のように推移していくと想定されています。
※4参考:IEA「AI and climate change – Energy and AI – Analysis -」
AIの電力消費量は今後どうなる?将来予測
AIの電力消費量は今後も増加すると予測されていますが、伸び方には大きな不確実性があります。理由は、AIサービスの利用者数が増える一方で、半導体、モデル、データセンター設備の省エネ性能も急速に向上しているためです。世界のデータセンターによる電力需要の将来予測について、詳しく見ていきましょう。
世界のデータセンターによる電力需要の予測
IEAによると、世界のデータセンターによる電力消費量が2025年の約485TWhから2030年には約950TWhへ増えると予測されています(※1)。2030年時点では世界全体の電力需要の約3%を占める見込みです。データセンターによる電力需要の予測を詳しく紹介します。
短期的には系統接続やガスタービンなどの供給制約がデータセンター建設のペースを抑える一方、2030年以降は高負荷なAI用途の普及によって上振れする可能性もあります。
AIの電力消費対策!ポータブル電源の魅力
Mac miniなどの専用機でAIエージェントを24時間365日稼働させる場合は、突然の停電に備えてポータブル電源を導入すると安心です。ポータブル電源とは、内部に大量の電気を蓄電し、コンセントが使えない状況でも電化製品に給電できる機器を指します。OpenClawはホスト上でコマンドを実行したり、ファイルを操作したりできるため、日常的に使うメインPCから分離して専用機やVMで運用する方も多いでしょう。
こうした専用機を常時稼働させる環境では、停電によってMac miniの電源が突然落ちると、AIエージェントが実行していた処理が中断する可能性があります。
そこで停電時の自動切り替えに対応したポータブル電源を接続しておけば、商用電源が止まった際もバッテリーから給電を継続し、Mac miniの稼働を維持しやすくなります。
AIの活用に必要な性能|おすすめの製品
AI専用機を24時間稼働させている書斎やオフィスにポータブル電源を常設する場合は、停電時に素早くバッテリー給電へ切り替えられる性能が必要です。また、常時設置しても仕事を妨げにくい静音性や、省スペースで設置できる携帯性も重視する必要があります。
EcoFlowは、AIの活用に最適なポータブル電源「RIVER 3 Max」を販売しています。「RIVER 3 Max」の主な特徴について、詳しく見ていきましょう。
RIVER 3 Max
定格出力600W、容量572Whのポータブル電源。突然の停電が発生しても、10ms未満でバッテリー給電へ自動で切り替わります。Mac miniやWi-Fiルーターなどへの給電を継続し、AIが実行している処理の中断を防ぐためのバックアップ電源に最適なモデルです。
本体とエクストラバッテリーを合わせた状態で約8.2kgのコンパクト設計であり、デスク周辺へも移動しやすいでしょう。動作音は30dB以下なので、書斎やオフィスへ常設しても作業を妨げません。容量572Whで、専用機や周辺機器へ長時間給電できます。
→X-Boostで最大900W、90%の家電を稼働できる「RIVER 3 Max」
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企業が取り組めるAIの電力消費対策
企業がAIの電力消費を抑えるには、業務ごとに必要な性能を見極め、過剰な計算資源を使わない仕組みを作ることが重要です。企業が取り組めるAIの電力消費対策を紹介します。軽量AI・特化型AIを活用して演算量を抑える
PPAで再生可能エネルギーを活用する
非化石証書を導入する
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
軽量AI・特化型AIを活用して演算量を抑える
企業が取り組みやすいAIの省電力対策は、全ての業務へ最大規模の汎用AIを使わず、用途に合った軽量AIや特化型AIを使い分ける方法です。AIの性能を一律に最大化するのではなく、業務価値に対して必要十分な計算量を選ぶことが、電力消費量の節約につながります。
例えば、定型的な文章分類、社内FAQ、特定業務向けの文書処理などで必要な精度を小型モデルが満たせるなら、大型モデルへ毎回問い合わせる必要はありません。一方、高度な推論や複雑な生成が必要な処理だけ大型AIへ振り分けます。
PPAで再生可能エネルギーを活用する
PPAとはPower Purchase Agreementの略で、需要家が電力業者と契約し、再生可能エネルギー由来の電力や環境価値を調達する仕組みです。PPAには、以下の種類があります。
オンサイトPPA:需要場所の敷地内へ第三者が太陽光発電設備を設置する
オフサイトPPA:離れた場所の発電設備から電力を調達する
同じ電力量を使う場合でも、再生可能エネルギーの調達を増やすことで、電力使用に伴うCO2排出量の削減へつなげられます。AI設備を大量に稼働させる企業ほど、演算効率の改善と電源の脱炭素化を両方進めることが重要です。
非化石証書を導入する
非化石証書とは、再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料を使わない電源で発電された電気が持つ「非化石価値」を証書として取引できるようにした仕組みです。
企業は非化石証書を活用した電力メニューや証書調達によって、使用電力に環境価値を付加できます。資源エネルギー庁は2021年、需要家ニーズへ対応するため、需要家によるFIT非化石証書の直接購入を可能にする再エネ価値取引市場を創設しました(※5)。
AIの演算量を減らす対策と、非化石証書で環境価値を改善する対策を両立しましょう。
※5参考:経済産業省 資源エネルギー庁「令和5年度エネルギーに関する年次報告」
関連記事:発電方法の10種類とは?自家発電に最適な太陽光発電のメリットとデメリットも紹介
AIの電力消費に関するよくある質問
最後に、AIの電力消費に関するよくある質問を紹介します。画像生成AIはテキスト生成AIより電力を消費する?
生成AIの学習は原発1基以上の電力を消費する?
それぞれの回答について、詳しく見ていきましょう。
画像生成AIはテキスト生成AIより電力を消費する?
画像生成AIは、一般にテキスト生成よりも電力消費が大きくなる傾向があります。1,000回の推論に必要な平均電力量を比較した研究結果は、以下のとおりです(※6)。
テキスト生成は平均0.047kWhだったのに対し、画像生成は平均2.907kWhとなり、同研究の条件では画像生成がテキスト生成の60倍以上の電力を消費しました。
※6参考:Power Hungry Processing「Watts Driving the Cost of AI Deployment?」
生成AIの学習は原発1基以上の電力を消費する?
OpenAIが開発した「GPT-3」は、機械学習の際に1,287MWhの電力を消費し、CO2排出量は502tでした(※7)。原子力発電1基が1時間に発電する電力量(約1,000MWh)を上回る規模です。ただし、生成AIの消費電力にはモデルごとに大きな差があります。
※7参考:NTT東日本「AIが奪うのは仕事ではなく電力?生成AIのエネルギー事情」
まとめ

本記事では、AIの電力消費問題について解説してきました。
IEAが行った最新の分析によると、世界のデータセンターによる電力消費量は2025年に約485TWhとなり、2030年には約950TWhへ増える見込みです。
AIの電力問題に対応するには、大型モデルを無条件で使うのではなく、軽量AIや特化型AIを業務に応じて使い分けることが重要です。さらに、PPAによる再生可能エネルギー調達や非化石証書の活用を組み合わせれば、AI利用に伴う環境負荷の低減につなげられます。
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